【Blog】 手からこぼれ落ちる命の尊さ

今日は忘れられない一人の男の子のお話です。

「助けてください」
お父さんのその目は本気でした。

今から3年前。
カンボジアのとある国立病院で抗がん剤治療中の2歳の男の子。
明日からの入院費を払えずに病院から退院を迫られていました。
そこにはカンボジアの医療費の現実がありました。カンボジアには日本のような保険制度がありません。

平均月収は世帯当たりおよそ3万円。がんの治療費には月に2万円かかります。地方の農村部で生計を立てるご両親にとって治療費が続かないのも無理ありませんでした。

そこで、ご両親が私たちを訪ねてきたのです。

当時から、病院や医療サービスにアクセスできない人や、金銭面等の理由で治療が継続できない人へのサポートも行っていましたが、がん治療のできる設備がまだ整っていなかったので、我々の支援のもとカンボジア国立病院で抗がん剤の治療を開始しました。男の子のがんの種類は比較的抗がん剤の効くもので、病状はかなり改善して帰宅できました。

しかし、残念ながら2週間後に亡くなったと連絡が入りました。

日本では、通常抗がん剤を投与した後は、毎日血液検査などをしながら退院の日を慎重に決めますが、カンボジアでは小児がんを治療できる施設が圧倒的に少ないため、治療が終われば翌日には退院させられます。

ベッドが空くのを多くの患者さんが待ち侘びているのです。
男の子はがんそのもので亡くなったのではなく、抗がん剤の副作用で帰宅後に免疫力が下がり感染を発症してしまったのです。

このような後進国での医療活動では、助かるはずだった命が予期できないところからこぼれ落ちていく瞬間を何度も目にします。そんな子どもを一人でも多く救っていくために、こども医療センターではこれからも、一人ひとりの子どもと家族に向き合ってサポートを続けていきます。