【Blog】 新生児のお母さんと信頼関係を築いたお話

今日は新生児のお母さん、レンチャレーさんとジャパンハートの助産師チームが信頼関係を築くまでのお話です。

レンチャレーさんは、今回3人目の子どもを妊娠、出産しました。
妊娠初期よりジャパンハートで受診していましたが、ある日、お腹の赤ちゃんの首にへその緒が巻かれていることがわかりました。
これは、赤ちゃんがお腹の中で動いている間にへその緒が体に絡まってしまう「臍帯巻絡(さいたいけんらく)」と呼ばれるもので、全分娩の約20~25%に起こると言われる比較的頻度の高いトラブルです。

しかし、絡まったへその緒を直してあげることはできません。
へその緒が何度もきつく巻かれていたり、出産時に赤ちゃんの状態が悪くなってしまった場合は、赤ちゃんをすぐに出すための処置や、場合によっては帝王切開が必要なこともありますが、レンチャレーさんの赤ちゃんの状態は良好だったため、それらを説明し次の健診の約束をしました。
しかし、不安になったレンチャレーさんは別の病院を受診。
その結果を持って、また私たちのところへ妊婦健診を受けにきました。こんどは不安で泣きながら。

「他の病院で帝王切開を勧められたんです」

リスク等を説明しないまま(もしくは医師自身が理解しないまま)、安易に帝王切開を勧めてしまう病院も多く説明を受けても忘れてしまったり、理解できないまま医師の言うとおりに手術を決めてしまうお母さんもいます。

「どうしても帝王切開はしたくない…」
レンチャレーさんには理由がありました。
14年前に子宮外妊娠し手術を受けたことがとてもつらい記憶となっていて、手術に対して並々ならぬ恐怖心があったのです。
不安な思いでいっぱいのレンチャレーさん。
わたしたちは、もう一度診察し、レンチャレーさんの話を聞いて落ち着かせながら、説明を繰り返しました。

約20~25%の赤ちゃんは、へその緒が首に絡まった状態で生まれてくること。
今、お腹のなかの赤ちゃんの状態はいいので、今すぐに帝王切開を決める必要はないこと。
帝王切開のリスク、メリットとデメリット・・・
もちろん決めるのは、お母さんであるレンチャレーさんです。希望するなら、ほかの病院での帝王切開ができることも伝えました。

そして、レンチャレーさんは残りの出産までの期間、ジャパンハートの妊婦健診に通院することを決めました。

4月11日、無事に女の子が生まれました。
レンチャレーさんの心から嬉しそうな笑顔が印象的でした。
わたしたちの活動する地域では、産後その日のうちに帰宅するお母さんが多くいます。
産後に赤ちゃんと一緒に入院し、医療者のケアを受けることはまだまだ当たり前のことではありません。
レンチャレーさんも2人目の出産時には、入院せずにすぐに自宅へ帰りました。でも今回はスタッフの言葉を信頼し、産後に入院することの大切さを理解して入院しました。退院後も1ヵ月まで、何度か受診に来ることも決めてくれています。

こうして、健診を通して妊娠中から産後に至るまでの長い間お母さんに寄り添い、信頼関係を築いていくことができました。
これからも、産前産後の健診の大切さを一人でも多くのカンボジアの医療者と妊婦さんへ伝え続けていきます。
1月にいただいた「お母さんと子どもの出産費用」へのご寄付によって、レンチャレーさんをはじめとする、出産と産前産後のケアを行うことができました。そして、何よりお母さんの心に寄り添うことができたことに、心から感謝いたします。ありがとうございます。

カンボジアで毎日どこかで生まれる新しい命。
一人でも多くのお母さんに安心・安全なお産をしてもらうためにジャパンハートの活動は続きます。